今日は昨日の続きです。
と、その前に今日はクイズです!
下の建物は何の建物でしょうかー?
写真の中に正解が写っているものもありますが上から、ロンドンにあるシェークスピア劇場、ドイツジルド島にあるカルティエ、エルメス、ヴィトン、ブルガリのお店達で、屋根は全て茅葺屋根です。茅葺き屋根が大好きな僕としてはたまりません。
ヨーロッパにもこんな建物があるんですね。と言うか、茅葺き屋根(廃棄するときに環境を破壊しないもの)に関する意識は、日本よりヨーロッパのほうがはるかに上です。
さ、本題。
この夏、高校の友人から「外壁を塗り替えたいんじゃけど」と相談がありました。見に行くと外壁はすごくきれい。
「外壁を塗り替える必要はないけど、屋根がまずいな」と言うと「どうりで営業がよく来ると思った」と。
屋根材に使われていたのはカラーベストという「セメントとアスベストが混ざったもの」でした。カラーベストは今でも使用する会社がありますが最近のものにはアスベストは入っていません。(友人宅のは入っています。)
こういう屋根↓
(すぐ傷むんだよね)
アスベストが禁止されたのが2004年。それ以前のカラーベストにはアスベストが入っていると思って下さい。(メーカーによってちょっと違います)
ただアスベストによる健康被害があるかというと、生活するうえでは問題ありません。屋根の上ですし、こういったものの場合危険なのは製造過程や解体するときです。だからご近所で解体の現場があるときなんかは要注意です。
それとあまり知られていないのが、壁紙であるクロスにも使用されていたということ。内装材に関しては昭和63年に禁止になっているので62年以降のものには含まれている可能性があります。
これも危ないのは解体するときです。クロスの張替やリフォームなどでクロスを剥がさないといけないときは飛散します。あとはユニットバスなんかにも使われていたのでアスベストは結構身近にありますね。
まぁこれらに関しても「生活するうえでは健康上に問題はない」とされていますが、ほんまかどうか僕にはわかりません。
そんな機械を持っていて測定したわけでもないので。
ただ、アスベストの健康問題については今日はスルーします。
問題は耐久性ですね。このカラーベストやセメントでできた瓦は耐久性が非常に短く20年から30年と言われています。30年もってくれたら御の字です。
今回の友人の家は築33年(中古で買われた)ということでしたが、何年か前にリフォームをされていたそうなので、その時に外壁も屋根も一度塗りなおしていると思うんですよね。
外壁はさっきも書きましたがかなりきれい。屋根も大体板金からサビが出るんですが、サビもなくきれい。
ただですね、この時スマホの調子が悪くて代替え機を使っていたんですが、その時の画像がすべてなくなりました( ノД`)シクシク…
施工前も施工中の写真もほとんどない( ノД`)シクシク…
( ノД`)シクシク…
今回、カラーベストはそのままでその上からガルバリウム鋼板をかぶせる「カバー工法」も検討したんですが、「あと30年は住めるか?」という友人の質問に、自信もって「住めるよ!」と言えなかったので、カラーベストを全部撤去して瓦を葺き替えました。瓦なら自信もって言えます!
ほいでもね、アスベストを撤去するにはマニュフェストを作って施工会社(うち)と収集運搬会社と最終処分場との3社契約が必要です。↓(普通の産廃ではいりません。アスベストが入っているためです)
そして廿日市市に埋め立てです。写真がないのでお見せできませんが、家1棟分の屋根材なので相当ありましたよ。処分費も通常の産廃の3倍くらい請求がきました。
写真がある範囲で↓
カラーベストを撤去した状態で、下地をして断熱材を入れて↓
南面と北面に1個ずつあったトップライトは両方とも撤去してガラス瓦に変更↓
鳩の入れない鳩小屋も撤去してすっきりさせました。
ここで僕のこだわりは2つ。
1つ目は野地板と呼ばれる下地材。今ほとんどの会社ではコンパネ(ベニヤ)が使われています。その方が早く済むし安上がりだから。畳と同じ大きさのものをバタバタ貼っていくより、たった12センチしかないものを1枚ずつ貼っていく方が当然手間はかかる。
今では90%以上の会社がベニヤを使用していると思う。こんな感じ↓
うちでは幅12センチの無垢の板を絶対に使う↓
ま、畳1枚分貼るのに7.5倍手間がかかる計算ですね。でもコンパネより無垢のほうが断然長持ちする。大工さんが10おったら10人とも無垢にします。でもお客さんの家ではコンパネを使う。安いし早く済むから。
そしてコンパネは傷みが早い。だから使わない。
2つ目はルーフィングという防水の紙です。普通はこういったものですが↓
うちでは遮熱タイプのものを使う。これは光を97%反射するというデータがある。値段は普通のものより4倍くらい高い。
ただ、家1棟で1万5千円が6万5千円になるくらいのことです。それで50年間快適に暮らせると思って下さい。安くないですか?
でも屋根屋さんに聞くと遮熱タイプのものを使う会社はあまりないらしい。
だってお客さんわからんもんね。だから僕もお客さんに「野地板には無垢を、ルーフィングには遮熱タイプのものを使っておきましたよ!」なんて言うことはない。
去年大改装させていただいてお客さんにもそう。別に伝えてない。きっと「ふーん」で終わるから(笑)
だからって、わからんけえってしょぼい建材を使いたくない。考えうるベストのものを僕は使いたい。
今回友人にお願いして屋根の葺き替えにかかった費用をブログに書かせていただきます。
足場を建てて、カラーベストを撤去して、下地、断熱、野地板、遮熱、瓦、雨どい込みで250万円ほどかかりました。(しかも友人が買う数年前にリフォームをしていた記録が残っているので実際にはもっと掛かっていることになる。)
雨どいはのけて単純に屋根だけだと200万ほどです。
カラーベストと瓦の金額の差は㎡=3000円ほどです。坪に直すと9000円ほど。
1階15坪、2階15坪の30坪の家で屋根の大きさが20坪だとします。20坪×9000円でその差は18万円。
50年60年は平気でもつ普通の瓦と、20年30年でだめになるカラーベストやセメント瓦がどっちが安いかなんて一目瞭然。
18万円けちって30年後に200万円払ってたらなんのことかわかりませんよ。安い家には絶対に理由がある。無いわけがない。
これは瓦にかぎったことではない。ビニールクロスだってそもそも10年から15年で張り替える前提じゃし、サイディングなんかもそう。いったらきりがないですけどね。
ただ安いからで判断すると痛い目にあいますよ。マジで。こんなんじゃけー家を買った人の約20%の人が後悔しとるってデータがあるんです。
建売やローコスト住宅を買う人、そこまで考えてますか?
今回の友人宅は築33年てことなので完璧僕の親世代ですね。親世代が残した負の遺産。
僕らの世代がまた下の世代に負の遺産を残さんようにしたい。カラーベストの屋根を塗装でごまかしてごまかして、下の世代になすりつけるようなことはやめて欲しい。自分たちで責任もってちゃんと処分してもらいたい。
バブル期には年間160万棟も家が建てられていたんですからね。ドイツでは年間2万棟くらいしか新築が建たないので、どれだけ多くの家が建てられてきたかわかりますよね。ちなみに今でも70万~80万棟も建てられています。
このようなアスベスト入りの建材で建てられて、リフォームを必要としてくる家が2020年頃からピークをむかえはじめるらしい。2020年ころ「から」ですからね。
冒頭のクイズで写真を載せましたが、環境先進国のヨーロッパでは今、茅葺き屋根が見直されているらしい。オランダでは年間何千棟もの家が茅葺き屋根で建てられている。デンマークでも茅葺き屋根は人気だそうだ。
日本では防火の関係で茅葺き屋根はもう許可がおりないけど(地域によってはできます)、環境を破壊しないという考え方はすぐにでも見習わんといけんと思う。
遅すぎるよ。何やってんだよ日本は!!と、ずっと前から思っている。そもそもアスベストが禁止されたのも欧米から遅れること20数年ですからね。
今の地球は未来からの借りものだよ。もうそんな素材で家を建てるのは終わりにしよう。(アスベストうんぬんじゃなくてね)ビニールクロスだってサイディングだって一緒のことだよ。きれいな日本を残しましょうよ。
おしまい♪