大きな地震があっても250年間倒れなかった家。

「釘をさしといて」

 

この言葉、皆さん一度は聞いたことや言ったことがあるのではないかと思います。

 

僕は忘れんぼうなので妻によく釘を刺されます。5寸釘で。

 

2週間前のブログで「江戸東京たてもの園」に行ったと書きました。

 

そこで見たこの茅葺き屋根の家は築250年以上経っているそうです。

梁がすごい。

 

250年間、何度も大きな地震を受けているそうですが、一度も重大な被害を受けたことがないんだとか。

 

よくお寺や神社や古民家などを指して「釘が一本も使われていない」などと言われることがありますが、そんな建物はほとんどありません。

 

もしあるとしたらこういう茅葺き屋根の家ですね。そのほかの建物は屋根に使われています。

 

まぁでも構造体(土台、柱、梁)にはほとんどの建物で使われていなかったんでしょう。

 

それが江戸時代の中頃、念のため釘を打つようになったそうです。

 

そこから念には念をという意味で釘をさすという言葉が使われるようになったそうです。

 

だから昔の家に釘が使われていたのはあくまでも念のためという意味合いが強いです。

 

余談ですが、みなさんが想像する釘というのはこう言う形でしょうか?

9センチあるので大きい部類の釘ですよ。↑これは西洋から入ってきた釘で、

 

日本で昔から使われていた釘はこちらです↓

今の釘と比べるとこんなに差があります↓

その名も「和釘」と言います。大きくて変わった形してるでしょ(笑)

 

 

 

さ、本題です。

 

最近の家はと言いますと、釘と金物だらけですね。それでもっていると言っても過言ではありません。もう念のためではありません!!

 

最近の作りについて今日はあまり触れませんが一つ伝えておきたい事は木と釘(鉄)は相性が悪いということ。

 

です。

 

 

ということで、僕は極力金物は使いません。最初は強いけどあとで強度が落ちるから。

 

だからできるだけ木で組みたい。

 

この継ぎ手はちょっと前にフェイスブックにのっけたもので車知栓継ぎ(しゃちせんつぎ)というもの↓(終わると勝手に別の動画が出てきますが、1つだけですよ)

 

 

入るかどうか仮に組んだ時の動画です。

 

 

赤丸の部分は柱が来るところです。

 

 

組むと赤丸の所の穴が1つになります↓

 

そこに栓を打ち込んだのがこちら↓

 

それとこの赤丸部分↓

 

組むと長方形の穴が2つできます↓

 

ここに栓を打ち込みます↓

これでもう上下にも左右にも絶対に動きません。

 

木は水分が抜けると必ず小さくなります。

 

このように、継ぎ手を簡単にして金物で引くだけですと、木が痩せて小さくなった時絶対に継ぎ手は緩みます。

最初はいいですが、何年もたって緩んだところに地震が来ると、そこは真っ先に壊れると思います。

 

 

僕の作った継ぎ手は、木がやせて小さくなるにつれて木が引き締まってさらに強度を増すという最強の継ぎ手です。

 

組んでいる状況はこちら↓(倍速なので見やすいと思います)

 

 

 

土台にもひと手間加えています。

 

下の2枚は柱の加工です↓

独立してから数年、日本建築のリフォームばかりしていて、どこのお宅もだいたい土台が潰れてドアや窓の開け閉めが出来なくなっていたことから

 

「そうか!土台の上に柱を乗せるけぇ、土台が潰れるのか!じゃあ、柱を下まで落としてしまおう。なおかつ土台と柱を繋いでしまおう!」と考えて作ったもの。

 

普通はこうなのです↓

僕も重量がかからないところは土台の上に柱を乗っけますが、重量がかかるところは必ず柱を下に落とします。

 

 

最後に、これは追っかけ大栓継ぎという継ぎ手です↓

 

この継ぎ手を絵にするとこうです↓

びっくりすることにこの追っ掛け大栓継ぎはもう機械で作ることが出来ます!

 

初めて機械で作ってあるのを見た時ひっくり返りました。よくこんな複雑な継ぎ手を機械が作れるなと。

 

僕は正直、どうしても手仕事じゃないと!と思っているわけではありません。機械が作っても人が作っても同じなら機械に任せます。(今回はすべて手で作っています)

 

ただ機械が作れないもっと複雑なものはいつも手で作ります。

 

でもこの追っかけ大栓継ぎというもの、機械で作れるのに頼んでいる会社を未だに1社しか見たことがありません。(県北の会社)

 

1カ所5000円かかるからなのか、知らないのか見ることがない。もっと簡単な継ぎ手で金物で補強してる。

 

何でだ?っていつも思う。なんでベストな継ぎ手を使わないんだ?って。

 

僕は家ってのは「雨風しのげて安心して過ごせるもの」で、それ以上でもそれ以下でもないと思っている。

 

もし地震が来た時に家が人を襲うことがあってはいけんと思っとるけぇ、継ぎ手は考えうる最高のものを作るようにしている。

 

火事になった時も一緒。ビニールクロスじゃ何も守れない。だから漆喰を必ず塗る。

 

シックハウスの原因になる建材を使うなんて一番しょぼい。シックハウスがどんだけつらいと思ってるんだ?

 

大工として見てきたもの、やってきたこと、シックハウスで自分も息子も苦しんだけぇこそ作れる安全な家。

 

これからもベストを尽くす。時代が変わっても家を作る以上ここは手を抜いてはいけない。素材と工法は一番大事だ。これは僕に限った話ではない。

 

 

 

 

いつもは継ぎ手を動画にとることなんて無いですけど(作業しながら撮れない)、いい機会だったので波輝カフェのスタッフさんに撮って頂きました。

 

そして暑苦しいことを書いてみました(笑)

 

 

長々とすみませんでした。それではまた来週の水曜日に~

 

 

おしまい♪