今回の古民家再生工事でまずしたこと。
まぁ当然解体なんですけど、大工工事としての取り掛かりは腐った柱を直すことでした。
見るからに梁のレベルが傾いていたので柱が腐っていることは想像していましたが、柱全部腐っていましたね。湿気による影響と床下がコンクリートではなく土なのでシロアリの被害がすごかったです。
余談、でもないのですが一昔前までは基礎は布基礎(ぬのぎそ)といって床の下は土がほとんどでした。シロアリ駆除の業者さん曰く床の下が土であることがシロアリが来る原因になることがほとんどだそうです。
家の外に羽根アリが飛んできて土の中を潜って家の床下に入っていくんです。なので家の床下をコンクリートにしておくのはすごく大事です。
コンクリート打設は動画しか撮っていないのですが、こちらのお宅も全てコンクリートを打っております。竹が生えないように20センチも打っております。
話しを元に戻して、解体の目処がついて柱の根継ぎに使う材料を地元の材木屋さん(うちのリビングの丸太などもこの材木屋さんです)に行くと、フォークリフトが壊れているので「木が出せない」と言われました。
どれくらいかかりますか?と聞いたところ「2週間ほど」と答えが返ってきたので待つことにしたのですが、結局1か月半も待つことにw
床のコンパネを剝がしてみると、柱の補修をしていた形跡があるんだけど、ぱつっと切って元の柱よりも細い木が添えられているだけでした。
結構、いやかなり雑だったな。色々と。
うーん。いつだれが補修したのか知らないが中々やるな。
今回柱の根継ぎには「金輪継ぎ」という継ぎ手を使い、全部で9ヵ所作りました。
まずはジャッキアップして腐った部分を切り落とします。
次は墨をつけて
墨通りに加工して
新たなひのきも加工して合体。
今回根継ぎに使った木はひのきなんですが、僕が1か月半待ってでも使いたかったのには2つ理由があります。
1つは地元の木を使って地元に還元したいということ。
もう一つは木の品質が最高に良いからです。
こちらの材木屋さんには我が家の29畳あるリビングを支える4本の松や、けやきの大黒柱、玄関の杉の丸太などを10年ほど前に買わせていただいております。
玄関の丸太を買った際、一緒に山に切り倒しに行ったんです。3ヶ月後くらいに「そろそろ必要なんですけど」と言うと、「まだ乾燥が不十分じゃ!あと3か月待て!そしたら良い木になるわ」と言われました。
今ね、木材は山で切り倒して2週間後くらいにはもう製材されて商品として現場に出荷されます。
山からすぐ切り出して、100度以上の高温乾燥機に入れて1週間ほど乾燥させるんですよ。その結果早く水分も抜けて早く商品になって、お金の回りも早い。
僕がいつも使う木は山での自然乾燥ですら6か月もかかるのに。
でもそのせこさが木の断面にしっかり現れるんです。
芯が真っ赤なのが今回もらったひのき。
黒ずんでいるのが高温乾燥機につっこまれたひのき。同じひのきでも乾燥方法でここまで違います。
これを見るだけで木に対する情熱が伝わってくる。そのおかげで僕はお客さんに良い家を作れる。もう信頼しかないです。
今回はひのきを使ったのでひのきの話をさせて頂くと、ひのきは元々ものすごく防虫効果の高い木です。今主流の北欧から輸入しているホワイトウッドと呼ばれる木たちと比べると800倍以上も虫に食われにくいというデータもあります。
だけど高温乾燥にかけられたひのきにはほとんど防虫効果はありません。
想像してみてください。みなさんが100℃のサウナに1週間いたらどうなりますか?干からびますよね?木も一緒なんですよ。汗をかいて元々の木の成分がとんでしまう。
だからじっくりと自然に乾燥させるんです。
そうする事で木が長持ちする。
皆さんの大事な家をしっかり支えてくれる木になるんですよ。
この20年くらいで建てられた家のほとんどがホワイトウッドと呼ばれる北欧から来る木でしょう。注文、建売問わず。
まぁ湿気、シロアリに弱い木なんですよ。先ほども言ったようにひのきより800倍もシロアリに食われやすいというデータもある。
でも主流である。安いから。
みんなね、自分家の家の素材に興味が無さすぎるんですよ。デザインだったり、とにかく安くだったり、機械化された便利な家だったり。
良い家ってそういう事では無いと僕は思いますけどね。
木の家なんでね。木ほど大事なものはないですよ。
おしまい♪